’88.8.8 横浜文体

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12月の初め、1頭の雌子牛が、子牛エリアに放たれました。
名を、「北斗」と言います。

これは、お客様から頂いた名前。
お客様は、星空から連想して命名してくださったのです。

しかし。

私にとって北斗と言えば、北斗晶!
そう、一世を風靡した、あの名女子プロレスラーです。
またの名を、デンジャラスクイーン!

子牛の北斗も、生後わずか3週間で離乳という驚異の成長ぶり。
その名に恥じぬ逸材なのです。

皆様、もう、お気付きのことと思いますが。

私は、大のプロレスファンなのであります。
ま、家庭を持ってからは、すっかりプロレスを観る機会が無くなってしまいましたが。
好きな事には、違いありません。

今回は、そんな私が最も感動したプロレスの試合について、書かせて頂きます。
暴走必至!
どうか、お許しを。

時は1988年8月8日。
場所は横浜文化体育館。

古いプロレスファンならば、もうお分かりですね。
そうです、アントニオ猪木vs藤波辰巳、最後の一騎打ちです!

この試合、大方の予想は、藤波が勝って、猪木は引退。
つまり、政権交代を掛けた大一番。

この時立場としては、王者は藤波で、猪木は挑戦者。
が、やはり直接対決で勝たなければ、真の藤波時代は到来しない。

どうしてもこの試合だけは、見逃す訳にはいかない。
そう思った貧乏学生の私は、当時住んでいた水戸から、えっちらおっちら鈍行を乗り継ぎ、横浜へ乗り込んだのでした。

立錐の余地もない、横浜文体。
第一試合から、緊張感溢れる引き締まった興行。
気合が入っています。

そしてついに、メインイベント。
大歓声の中、ゴング!

試合展開は、オーソドックスなストロングスタイル。
基本に忠実な、密着型の技の応酬。
大技がポンポン飛び交う、昨今流行りのスタイルとは、まるっきり対局に位置する内容。
あれで観衆の目をグイグイ惹き付けてしまうのだから、とんでもない師弟なのです!

圧巻だったのは、開始から45分が経過した辺り。
突如、アマレス風のバックの取り合いが始まる。
何というスピード!
2人の底知れぬスタミナに、場内大歓声!!

最後の最後まで、勝利への執念を燃やし、死力を尽くした両者。
しかし結果は、60分フルタイム、ドロー。

負けなかった猪木。
勝てなかった藤波。

しかし、しかし!
素晴らしい試合だった!!

猪木が泣いている。
藤波も。

肩車されて、観衆に手を振る両雄。
観衆も、既に喉が潰れている。
声にならない。
それでも叫ぶ。

最後は選手と観客が、完全に一体。

あんな素晴らしい興行に出会ったことは、私にとって一生の想い出なのです。
プロレスって、本当に素晴らしいなあ、プロレスファンで良かったなあ、と、つくづく思ったものです。

さて。
時間を現在に戻します。

私の仕事は、牛飼いです。
私の牛飼いも、猪木と藤波のように、基本に忠実でありたいなあ。
そしてその、基本に忠実な酪農で、見る人を感動させてみたいなあ!

じゃ、牛飼いの基本って、何?

技術的な話をしたら、きっと十人十色、それぞれの答えがある筈です。
しかしその根本は?

やっぱり、牛を健康に飼う、ということに、行き着くと思うのです。
我々は酪農なので、牛を健康に飼って、高品質な生乳を搾って、そこから美味しい牛乳や、乳製品が出来るのだ、と。

全ての基本は、牛が健康であること!
それに尽きる・・・。
多分。

現状でも我々の牧場の牛達は、健康状態は良好であると、私は思っています。
しかしそれに満足せずに、常に考え、小さな改善を積み重ねていく。
その先に、人を感動させることのできる酪農の姿が、あるんじゃないかなあ!

なんて。

プロレス好きの牛飼いオヤジの夢は、まだまだ果てしなく、広がっていくのであります。

 

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牧場ライブカメラ

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