私の牛好きの原点「共進会」
乳製造担当の清永です。
段々と寒くなり、起きるのが億劫になってくるこの頃ですが、私にはこの時期ならではの楽しみがあります。それは、農閑期になる秋ごろから春ごろに開催される「共進会」に行くことです。
私の牛好きの原点、酪農を楽しいと思えるようになったきっかけが、共進会での経験と言っても過言ではありません。
共進会は、分かりやすく言うと牛の美人コンテストです。
乳牛という動物は、人間が飼養する中で、「飼養しやすく長命で、より良い質のお乳が多く生産できること」、などを目的に長年改良されています。
牛は仔牛を産まないとお乳が生産できないため、子を毎年産める丈夫な足腰をしているか?沢山お乳を生産できる張りのいい垂れないおっぱいをもっているか?顔は生き生きしているか?太り過ぎてないか?その牛の品種の適度な大きさで、雌牛らしい優美な姿か?と、これ以上の沢山の審査要項があり、それぞれ体の部位やそのバランスによって評価点がつけられています。
農家が、共進会に牛を出品するということは、早朝~深夜までのいつもの仕事の合間にしなくてはいけない事が増えるということです。牛を綺麗にブラッシングしたり、毛を刈ったり、専用のシャンプーなどで身体を洗ったり、人間でいうウォーキングやポージングの練習もやらなければいけません。
良い改良を長年積み重ね、毎日牛の管理を行っている、農家の努力やプライドと、今後の酪農業を盛り上げていきたいという気持ちが大きく関係している大会だと思っています。
大会中は、ピリピリ緊張感が漂います。会場に到着した順にどんどん洗い場で出品牛を洗い、綺麗に見えるように仕上げをしていきます。体格が良く見えるように毛を刈ったり、毛色が綺麗に見える様に軽くスプレーで染毛したり、毛艶が良く見えるようにブラッシングしたり、より自然に見えるように牛に仕上げすることも、農家の技術が見られるところです。
出品される牛からも緊張が伝わってきます。はじめての場所で沢山の人がいることに驚き、移動中に興奮状態になってしまい脱走したりすることが多々あります。経産牛は約800kgある牛がほとんどなので、大人1人の力では止められません。
自分の牛はもちろんのこと、他人の牛が興奮しないように作業したり、リラックスできるような会場作りをみんなで勤めています。大会中、牛を引きリング内を歩く人を「リードマン」と、言います。基本的にはこの大会までにその牛を調教してきた人や出品者がやりますが、牛を大きく見せるために小柄な人や女性がリードマンを務めることもあります。なん十キロもある大きな牛の頭を上に高く上げて保持するのはとても大変なことです。
大会には必ず、プロの審査員が1名います。リング内を優雅に歩く牛たちを中心で観察し、リードマン一人一人に牛の話を聞きながら順位をつけていきます。ですが、審査員が大きな声で順位を言っていくと牛も人も緊張がきれてしまうため、何も言わずに指をさしていきます。リードマンは牛が綺麗に見えるように引きながら審査員のことも見ているので、大変な集中力が必要です。みんなとってもかっこいいんですよ!
共進会は普段自分の家だけで仕事をしている農家さんにとって(私にとって)の、情報収集の場であり、たくさんの人とコミュニケーションがとれる場です。最近は、農業高校の学生や、女性の参加者が増え、とても活気にあふれていているので3K(臭い・汚い・苦しい)を払拭するいい機会だと思っています。
私は何をしているかというと、仲良しの農家さんや先輩方、後輩の応援や、出品牛の写真を撮影することがお決まりで、空き時間に農家さんと会話しています。「おう、元気か?」「今はどこで何してんだ?」「今日は牛引かないのか?」「うちの牛の写真撮っといてくれよ。」と、農家さんに話しかけてもらうと、嬉しくて嬉しくて・・・。自分の原点に戻ってきたことを実感する機会になっています。
共進会に出品する農家はごく一部ですが、このような大会があることも皆さんに知ってもらいたいとおもって長々と、ブログに書かせてもらいました。
関東は基本的に、ホルスタイン牛の出品が多いのですが、ジャージー牛の共進会も盛んにおこなわれています。
森林ノ牧場の牛も、そのうち・・・。なんて、夢にみています。笑